観光バスの系統
ゴミ焼却場で生成される高濃度のダイオキシン日本では、少なく見積もっても一年間に四〜一五厘のダイオキシンが発生していると考えられますが、その八割がゴミの焼却施設から出ています。
まさにゴミ焼却場が汚染の元凶といってもいいでしょう。
このような焼却システムを改善しないかぎり、ダイオキシン汚染は加速度的に進むと思われます。
逆にゴミ焼却場が大きく変われば、それだけで八割のダイオキシンの発生が抑えられるといえます。
それをねらって厚生省は、一九九○年に、「ダイオキシン類発生防止等ガイドライン」を設定して指導してきました。
このガイドラインが徹底されると、ダイオキシンの排出量が現在の一○分の一程度に減ると予想されていました。
しかし強制力がなく、不徹底に終わったため、汚染はさほど改善されていないようです。
そこで一九九六年に、厚生省は耐容一日摂取量として一○g/g体重を設定し、さらに「恒久対策」と「緊急対策」を打ちだしました。
しかしこれも疑問の多いものでした。
数字の甘さもさることながら、「早急に規制しなければとんでもないことになる」という危機意識が大きく欠如していたからです。
厚生省のダイオキシン削減検討会が調べたところでは、全国のゴミ焼却場七○五カ所のうち、ガイドラインで示した排ガスの新基準値を遵守している施設は二二七カ所、残りの五六八カ所の焼却場は基準値を超えた排ガスをまき散らしているのです。
またそのうち五二のゴミ焼却場で緊急対策が必要とされています。
その典型が、茨城県新利根町のゴミ焼却場です。
ここは一九七一年につくられた旧式の施設で、つい最近まで分別されないゴミが不完全燃焼の状態で燃やされていたといいます。
たしかにさまざまな事情があり、一気に完全な対策を実施できなかったのでしょう。
しかし行政は、常に予防衛生的な立場で早急に行動する義務があります。
疑わしきはまず調査すべきです。
全部を改善できなくても、できるところから着実に改善していくべきではないでしょうか。
何といっても厚生省のガイドラインには、法的な強制力がないことが問題です。
また全国に数万基あるといわれる産業廃棄物の焼却施設が規制の対象からはずされていることも早急に改善すべきでしょう。
これらの施設は小規模なところが多く、公害防止装置を設置していないところが大半ですから、大量のダイオキシン類が出ていることが考えられます。
そもそもダイオキシン類の汚染レベルを分析検査するシステムが確立していないことが問題です。
ダイオキシン類はごく微量の同族体分析を多数行なわなければならないため、非常に高度な分析技術が要求されます。
ところがそうした装置を持つところは、一九九三年当時で国内に二○カ所ほどしかなく、またその装置を用いて分析できる技術者の育成も遅れています。
この分析は、技術がともなっていなければデータに大きな狂いが生じます。
それだけに装置と同時に、技術者の育成が重要です。
また分析費用が高いのも問題です。
分析に必要な試薬は日本では生産できないので、調べるだけで四○〜八○万円もかかってしまいます。
これではダイオキシン類の体内蓄積が気になっても、自分の汚染度を簡単に調べることはできません。
ゴミ焼却場の煙突の真下に暮らし、ダイオキシン類の汚染が心配でも、また産業廃棄物を常時、野焼きしていた焼却場の従業員で、ダイオキシン類の洗礼を受けていると思われる人でも、大変な出費を覚悟しなければ自分の汚染度を知ることができません。
分析や検出に多大な費用がかかるから、というわけではないでしょうが、行政の調査研究はいつも後手にまわります。
問題があると推測されているのですから、費用がかかったとしても、実態を正確に把握すべきではないでしょうか。
しかし現実には、体系的な調査研究はほとんど行なわれていないのです。
こうしているあいだにも、ダイオキシン類の汚染は続いています。
大気や土地を汚し、川や海を汚し、人間や自然を汚しているのです。
私たちは、そんな現状を黙って見ているしかないのでしょうか。
すでに述べたように、諸外国では、何年も前からダイオキシン類の毒性に気がつき、経済、社会、産業などの各分野でさまざまな対策が講じられ、効果をあげています。
日本も一刻も早く国の明確な対策が望まれます。
科学がつくりだした物質ですから、科学でどうにかなりそうな気がするのですが、人間にとって、ダイオキシン類はとにかく手ごわい相手です。
何度もいいますが、ダイオキシンは構造的にじつに安定した物質であり、それだけに分解が難しいといわれています。
しかし最近、熱や光、薬剤などを用いることにより、ある条件下で酸化反応や脱塩素化反応を起こすことで、ダイオキシン類を分解できることがわかってきました。
現在までに開発研究された方法のうち、代表的なものをあげておきましょう。
@よく混合した燃焼室内で、焼却時の燃焼ガスを高温雰囲気に保って、ダイオキシン類の発生を抑制する完全燃焼法。
A太陽光または紫外線領域の波長を照射することにより脱塩素化する光分解法。
B酢酸エチル等の溶媒を用いることにより、ダイオキシン分解微生物の代謝活性を促進させ、ダイオキシン類を無害化する微生物分解法。
Cペレット化焼成法。
D超臨界水による分解法。
「完全燃焼法」は、ダイオキシンの発生を防ぐという点では優れており、溶融固化処理法として、いくつかの処理施設で実用化されています。
これは、一二五○〜一四五○℃という高温の条件下で完全燃焼して、ダイオキシン類などの毒性物質を分解しようというものです。
ダイオキシン類の分解率も九九%にのぼりますが、施設が高価で、運転管理上の焼却コストがかかるという欠点があります。
「熱分解処理法」は、「加熱脱塩素化処理法」という呼び名で一部、実用化されています。
適切に運転された場合、九五%以上のダイオキシン類を分解しますが、加熱温度や酸素濃度などのコントロールが難しいところが難点です。
また低酸素下で行なわないと、逆にダイオキシン類が発生してしまうという大きな欠点A低酸素雰囲気で加熱することにより、ダイオキシン類を脱塩素化、水素化する熱分解処理法。
「ペレット化焼成法」は、飛び灰に微粉炭と水を加えてペレット(団塊状原料)化し、それを二○○℃程度の高温で焼成する方法です。
いま、その有効性が認められ、実用化すべく小型実験装置でテストが行なわれています。
「光分解法」は、太陽光を使うという点がエコロジカルですが、完全に分解するには紫外線で八時間、太陽光で二四時間という時間が必要です。
また分解工程を主として開放系で行なうため、環境への負荷が問題になります。
「微生物分解法」は、微生物を使うという点で評価できますが、残念ながらこの方法は光分解法より長い時間がかかるうえ、開放系なので、環境への負荷が心配されます。
微生物というデリケートな生物を扱うだけに、代謝活性を高めるための環境管理が難しく、分解効率もダイオキシン類の塩素置換体の数が多くなるにつれて低下するという難点があります。
このようにいくつもの方法があり、その一部は実用化されていますが、ここにきて注目を浴びているのが、Eの「超臨界水による分解法」です。
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